ふらついて立てない子が来院されました。
歯茎の色は白く、貧血のように見えたので早速血液検査と超音波検査をすると・・・

血管肉腫脾臓

お腹には腹水がたまっており、脾臓が腫れて見えます。
正常な脾臓はぼこぼこには見えず以下のように見えます。

きれいな脾臓

腹水をチェックすると血液のように真っ赤なものが抜けたので、脾臓からの出血と考えてすぐに輸血と手術の準備をしました。
幸い知り合いのわんちゃんから血液をもらえたため、急いで輸血して手術を始めました。

手術は脾臓全体を摘出する方法です。
すべて取っちゃうと生活の質が落ちたり、寿命が縮んだりしないのですか?とよく聞かれますが、ほぼ影響はありません。
免疫に関係していたり、造血に関係していたりはありますが、他の器官でもやってくれることなので、今わかっている範囲では大丈夫と言われています。実際脾臓摘出後でそのことにより問題になった子はみたことがありません。
なにより摘出するメリットの方が大きい場合がほとんどなので(摘出しないと数日で亡くなる)、摘出します。

お腹を開いて、脾臓をつまみ出して、じゅーっと焼きます。
お腹を開けた瞬間、数百mlの血液の腹水があふれ出てきます。

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血管のシーリングデバイスがあるため、摘出は2,3分くらいです。
もろい箇所があって、血が出るとやっかいなので慎重に進めます。
あとはお腹の中や肝臓に同じようなものがないかをチェックしてお腹を閉じて終了です。
この子は数日の入院で安定し、元気に帰っていきました。

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やはりエコーで見た通りの脾臓で、そこからの出血により貧血を起こしていたようです。
病理検査に提出し、血管肉腫との診断が帰ってきました。
あまり良い腫瘍ではなく、脾臓が爆発したときの血液に乗ってお腹の中に同じような腫瘍を作り出すものです。
数か月後に同じような腫瘍ができ、そこから出血して亡くなる子が多いです。
少しでも延命するためには抗がん剤を投与し、細胞の成長を抑える方法をとります。

脾臓が爆発する前に変なふくらみを見つけられれば先手を打って脾臓摘出をすることもできます。
高齢になると多くなる病気ですので気になる方は健康診断を受けられてみてはいかがでしょうか。